私道に面した土地を売却する際の注意点は?

私道のみに面した土地を売却するには様々な注意点が存在します。
本記事では、売却時の注意点や成功のためのポイントを分かりやすく解説します。

私道に面した土地を売却する際に知っておくべき基礎知識

私道とは?公道との違いと基本的な定義

私道は個人または法人が所有する道路で、公道とは異なり公共機関が管理しません。道路の修繕や管理は所有者である個人などが行い、これに要する費用も所有者が負担します。

また、私道であれば、たとえばライフラインの引き込みのためにその道の掘削が必要となった際の通知先も、その所有者である個人などです。

私道付き土地が特別な注意を要する理由

私道には以下のような特徴があり、売却時に考慮が必要です:

  • 権利関係が複雑(共有名義や所有者が多いなど)な場合がある
  • 通行や掘削について私道所有者の許可が必要な場合がある
  • 通行権や地役権が設定されている場合がある
  • 買い手が懸念するポイントになる可能性がある

私道に面した土地売却の注意点:権利関係を確認する

土地が面している道が私道の場合、主なパターンは、次の3つです。

  1. 土地と私道がセット(=自分が私道の所有者)
  2. 土地と私道の所有者が異なる(他者の所有である私道を使っている)
  3. 土地とセットで私道の共有持分を持っている(自分は私道の共有者)

私道部分の所有者を確認する方法

私道部分の登記簿謄本を取得します。登記簿は査定や売却を依頼すれば仲介会社が取得してくれます。法務局に行けば自身で取得することもできます。

●単独所有の場合

自分が所有者なら売却は比較的スムーズ。ただし、買い手が維持管理の負担を懸念することがあります。

私道所有者が自分以外の場合、私道の通行や掘削、自分の宅地との境界確定など許可が必要なことが多く、場合によっては私道所有者に承諾料などを支払う必要があります。

●共有名義の場合

私道の通行や掘削、境界確定に共有者の同意が必要な場合があります。共有者のなかにはお金を要求してくる人がいる可能性もあります。

私道に関連する通行権や地役権の確認と整理

通行権や地役権が設定されている場合、新たな所有者への引継ぎをスムーズに行うため、その内容を明確にしておく必要があります。

私道を通行する根拠が、私道所有者との契約である場合、新たな所有者が通行できるのか確認が必要です。契約継承の可否や通行料など確認しましょう。
登記簿謄本や通行承諾書を確認し、トラブルを未然に防ぎましょう。

私道におけるトラブルの事例と解決策

①私道の通行を禁止される

原則として、他者の所有する私道を自由に通行することはできません。通行するためには法的な根拠が必要です。

  • 建築基準法上の道路として指定されている
  • 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者
  • 通行地役権(他人の土地を通行する権利)が設定されている
  • 私道所有者との間で私道を自由に通行できる旨の契約をしている

以上のケースでは私道所有者は通行を禁止することはできませんが、私道は自分の土地と勘違いしている私道所有者もいますので、トラブルになりそうな場合には弁護士などに相談して話し合うことをお勧めします。

②ライフラインの新設を認めない

当社でも私道承諾の交渉経験がたくさんありますが、大人数で共有している私道に面していると1人2人くらいは私道の掘削(ライフラインの新設)に反対する人がいるケースがあります。

金品が目的の人もいれば近隣との関係性だったり、単に機嫌が悪くて拒否する人、理解できないからなんとなく嫌だという人もいます。

共有私道のケースで所有者が遠方に住んでいるため当社が所有者の代理で交渉したところ、代理人が来たことに腹を立てて承諾を拒否し、「掘削をしたら工事箇所に車を停めて工事を妨害してやる」と言われたこともあります。

私道所有者との交渉はさまざまでお互いさまだからとすんなりと承諾書にサインをする人もいれば、お金を払ったり、お礼の品を持ってお願いに行ったり、何度も通って丁寧にご説明をするなどして何とか承諾をもらうこともありました。

何度説明してもお金を払うと言っても、どうやっても承諾をもらえない場合は売買契約が解約になるケースもありました。

掘削を頑なに拒否されたり法外な承諾料を請求されたりして、トラブルに発展するケースがあることから、民法が改正されて(2023年4月施行)共有物の管理や工事に関する新しいルールが導入されました。

改正によって、他者の土地にライフラインの設備を設置する権利が明文化されて、あらかじめ通知を行うことで他者に最も損害の少ない必要な範囲内で他者の土地を利用できることになりました。

ライフラインの新設を交渉するなら法改正があったことを丁寧に説明し承諾をもらいましょう。

改正後も妨害行為を行う人がいるかもしれませんが、自力救済は禁止されているので、妨害行為があった場合は弁護士などに相談しましょう。

③管理などの方針がまとまらない

砂利道の私道をアスファルト舗装したい、古くなった給排水管を更新したいなど私道の管理について方針がまとまらない可能性があります。

共有である私道について方針を決めるためには、次の合意が必要となります。

保存:各共有者が単独で可能
管理:各共有者の持分の価格に従って過半数で決する
変更:共有者全員の同意が必要

行為が「管理」に該当するのか「変更」に該当するのかは、行為の内容や影響の程度によって区別されます。

軽微な補修工事や道路の形状を大きく変更しないライフラインの新設などは管理にあたり、
階段の新設や全面的な舗装の改修などは変更に該当します。

よくある質問とその回答

私道部分が共有名義の場合、売却はどう進める?

私道部分の売却そのものに共有者の許可は不要です。スムーズに売却を進めるために売却する意向であることを話して通行・掘削承諾書の取得などを進めておくと良いでしょう。

法改正で私道通行掘削承諾書は不要ですか?

「通知」すれば掘削が可能となりましたが、民法改正を知らない人がいる可能性があるので事前に説明をすることをお勧めします。

私道の共有者と連絡がつかない(所在が分からない)場合はどうすればいい?

相続登記が行われていないなどの理由で私道の所有者と連絡が取れない場合には裁判所で「意思表示の公示送達」手続きを行います。

私道に車が停めてある、私道に植木鉢があって通行の邪魔

私道所有者が「私道は道路ではなく自分の土地だ」などと誤解することで、好き勝手に利用をしている場合があります。まずは当事者間で話し合うことが大切です。当事者間で解決が難しい場合は弁護士や自治体の道路課(建築基準法上の道路に該当する場合)など第三者に間に入ってもらうことも検討しましょう。

まとめ:私道付き土地の売却で失敗しないために

権利関係の整理と近隣との友好な関係が成功の鍵です。
民法の改正で取引の弊害は少なくなっていますが、不動産会社や専門家の協力は不可欠です。
私道の特性を理解し、トラブルを未然に防いでスムーズな取引を目指しましょう。

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投稿者プロフィール

栄不動産
・不動産業界20年の経験を持つベテラン
・宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、賃貸不動産経営管理士、ファイナンシャルプランナーの資格を保有
・実需不動産、投資用不動産、任意売却など幅広い分野の実務経験
・これまでに数多くのお客様の不動産売買、賃貸、資産運用をサポート

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