不動産売買は人生の中でも大きな取引の一つです。しかし、思わぬトラブルに巻き込まれてしまうケースも少なくありません。

特に注意が必要なのが、「契約不適合責任」です。 この責任は、売主に瑕疵(欠陥)がある物件を売却した場合に発生し、損害賠償請求などの責任を負う可能性があります。

この記事では、不動産売買における「契約不適合責任」について、分かりやすく解説します。

契約不適合責任について解説

そもそも契約不適合とは?

契約不適合責任とは売買契約において引き渡された目的物が種類品質数量に関して契約の内容に適合しないものであるときに売主に発生する責任です。

不動産では建物の品質に関する部分がメインになります。

特徴としては無過失責任で売主に落ち度がなくても責任が発生します。

どんな場合に責任が発生するのか?

契約不適合かどうかの判断基準は以下の2点です。

契約当事者の合意契約の趣旨に照らし目的物に欠陥があること

①通常予定されていた品質を欠く

  • 雨漏り
  • 漏水・給排水の故障
  • 設備・内装の不具合
  • シロアリの害
  • 建物の建築基準法違反
  • 土地の接道義務違反
  • 土壌汚染
  • 地中埋設物
  • 心理的瑕疵 など

②特別に予定されていた品質を欠く

  • パンフレットとの相違(特に高級だと広告していたがそれに至っていない)
  • 特別仕様の建物と広告していたが特別仕様ではない

契約不適合責任で買主が請求できる権利

追完請求

不具合の修繕や設備の取り替えなどを求めることができます。

代金減額請求

相当期間を定めて修繕を求めても修繕してくれない場合に代金の減額請求をすることができます。売主が追完を拒否している場合には、相当期間を定めずに代金減額請求ができます。

契約解除

不具合の修繕をしてくださいと言った上で売主が修繕や設備の交換をしない場合には、不具合の内容が軽微である場合を除いて契約を解除できます。

損害賠償請求

契約不適合によって買主に損害が生じた際に、損害賠償を請求できます。
契約不適合は無過失責任ですが、損害賠償請求には売主の帰責事由(責められるべき理由や落ち度、過失など)が必要です。

買主(個人)の権利行使期間

売主が個人の場合

民法では買主は契約不適合を知ったときから1年以内にその旨を通知する必要があると規定されています。

民法では1年以内と決められていますが、一般的には構造耐力上主要な部分は3か月、設備は1週間と契約書に記載されていることがほとんどで契約書の内容が優先されます。

例外として売主が不適合を知っていた場合、売主に重過失があった場合には期間制限がなくなります。

売主が法人(非宅建業者)

不動産の売買契約書では権利行使期間を特約で3か月(設備は1週間)としていることがありますが、消費者の利益を一方的に害する特約(1年以内を3か月)は無効とされた判例があるので、事案の内容によっては特約が無効となることがあります。

そのため、消費者契約法が適用となる売買契約では実務上は契約で1年以内と定めておくことが多くなります。

売主が宅建業者

宅建業法の40条で引き渡しの日から2年以上と決められています。
2年よりも短い期間を特約で定めても無効となります。

新築住宅の場合は品確法で10年間構造耐力上主要な部分の瑕疵に責任を負うと規定があります。

契約不適合責任によるトラブルを未然に防ぐための対策とは?

契約時に正確に告知をする

中古物件の場合、設備表などで設備に不具合があると告知をすることによって契約不適合責任の対象外とすることができます。設備表などは具体的にありのままを記載するようにしましょう。

付帯設備表
付帯設備表

契約不適合責任を免責とする特約をつける

原則として契約不適合責任を免責とする特約は有効となります。
ただし以下に該当する場合には契約不適合責任を免責できません。

  • 売主が知りながら告げなかった事実などについては免責とはならない
  • 宅建業法・品確法・消費者契約法の規定が適用となる場合には免責とはならない

インスペクション

建物状況調査(ホームインスペクション)は、専門家が建物や住宅の劣化状況や欠陥の有無などを調査するサービスです。主に中古住宅の購入前に実施され、買主が安心して物件を購入できるようサポートします。

国土交通省のガイドラインに基づき、建物の構造、外壁、屋根、内装、設備、敷地などを調査します。具体的には、下記のような項目をチェックします。

  • 構造: 基礎、柱、梁、筋かいなどの主要な構造体に亀裂やひび割れがないか
  • 外壁: 外壁材の劣化、雨漏りの跡、ひび割れなどがないか
  • 屋根: 屋根材の劣化、雨漏りの跡、棟板金の浮きなどがないか
  • 内装: 壁や天井の亀裂、床の傾き、シロアリ被害などがないか
  • 設備: キッチン、浴室、トイレなどの設備の動作確認、水漏れや破損がないか
  • 敷地: 地盤沈下、不同沈下、排水設備の状況など

参考:既存住宅インスペクション・ガイドライン(国交省)

専門家のチェックによって建物の不具合を把握できるようになり買主様へ正確に告知することができます。100%不具合を発見できるわけではありませんが、売却後に買主様から「契約不適合責任」を追求されにくくなります。

まとめ

契約不適合責任は、不動産売買において重要な概念です。トラブルを未然に防ぐため、しっかりと理解しておきましょう。

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投稿者プロフィール

栄不動産
・不動産業界20年の経験を持つベテラン
・宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、賃貸不動産経営管理士、ファイナンシャルプランナーの資格を保有
・実需不動産、投資用不動産、任意売却など幅広い分野の実務経験
・これまでに数多くのお客様の不動産売買、賃貸、資産運用をサポート